SCP-1983 (Doorway to Nowhere, 先の無い扉)の非公式レポート部分を自分でも日本語訳してみました。

SCP-1983 - SCP Foundation

概要

補遺3:1989年5月23日、D-14134は、25mのコードでモニターにつながれた有線テレビカメラを与えられ、できる限りの内部調査と帰還を命じられる。一度戸口を通過すると、カメラからの映像は遮断。コードはぴんと引っ張られ、その後切断される。

数時間後、SCP-1983-1の怪奇現象が消失する。内部からは、いくつかのエージェントの乾燥した遺体のほか、エージェントによって記述された非公式のSCPレポートである文書1983-15が発見される。内容は次の通りである。

文書1983-15

アイテム番号:さあな

オブジェクトクラス:Keter。残念だけど。

特別収容プロトコル:お前は死ぬ、かわいそうにな。

これは脅しじゃない。俺はエージェント・バークレー、この最低な事態の真っ只中にいる。お前もそうなんだろ? なら教えてやるが、お前は死ぬ。俺はもう多分死んでるだろう。

話が逸れたな。収容手順に取り掛かろう。やることは本当に一つだ。あの忌々しい扉を閉めろ。通ってもここから出られないからな。まあ、もう試したか。だが、奴らは、出ようと思えば出られる。おかげで俺らはこんな場所を見つけちまった。できれば、お前がもう扉を閉めてくれてるといいんだがな。俺らは閉めた。あの扉から出るのは諦めたんだ。まだやってないなら、真っ直ぐ戻って扉を閉めろ。今はそれだけ優先しろ。お前は死ぬんだ。どうせなら、死ぬ前に良いことしときな。

説明:さて、この家の話をしよう。知ってたら言ってくれ。財団はアメリカのクソ田舎で問題が起きたと報告を受けた。牛や野生動物がおかしな死に方をしているとか、行方不明になる奴がいるとか。ある時死体が発見されると、検死で心臓が無くなっていることが分かった。切り落とされたり、引き裂かれたんじゃなく、無くなっている。胸の真ん中が空っぽだ。

真っ黒い何かがその辺をふらついているのが発見された。財団のとある職員が、以前似たようなのを見たことがあって、その殺し方を解明した。銀の弾丸だ。撃つ時に、神への祈りを込める。文字通りに。なぜかは知らんが、それでうまくいく。どの神かは関係ない。祈ることがマジで重要なんだ。

俺にはもうできねえ。奴らの巣を見ちまったからな。

とにかく、財団はそれがどっから来ているか発見した。田舎の真ん中にある家からだった。その家は、殺人やらカルトやら儀式やらなんやかんや騒ぎが起こって以来、何年も空き家だ。重要なのは、そういうのが全部正面の扉から出続けているってことだ。ある部隊が突入して、二度と帰って来なかった。だが化け物も出て来なくなった。頭がマトモな奴は言っただろうよ、十分だ、目を離すな、動くものがあれば殺せ。だがこれが財団だ。

お前はどの部隊のタフ野郎だ? セクェーレ・ノースか、俺みたいに少年聖歌隊か。お前は扉をぶち破って中に入る。それだけだ。お前は終わりだ。

リビングは最悪だ。そこでオブライエンが捕まった。奴らが近づいて来て、突然、あいつは膝を打った。それで、奴らの一人が心臓を取ったんだよ……爪で、だったかな。

奴らの姿はここでははっきりしない。お前もそれには気付いてるだろう。奴らは影みたいなもんだ。光から離れるようにしろ。バカげて聞こえるかもしれないが、考えてみろ。光の中で、影は強くなる。奴らには輪郭がある。暗闇にいるとき輪郭はぼやける。奴らは、お前にほとんど触れられないし、奴らにはお前がほとんど見えていない。きっと奴らは、お前の影で、見ているんだと思う。分からないが。正直、わらにもすがる思いだ。

お前は扉を出て戻ろうとしたかもしれないが、もしまだやってないんなら、やめておけ。もっと酷いことになる。化け物はいないが…… ジョーンズは家から離れて行くと、信じられないかもしれないが、溶け始めた。体の中から何かが弾け始めて、それで…… とにかく、あいつは戻らなかったってことだけ知っておけばいい。それを見た俺らは、扉を閉めることにした。

それで、俺らは家の中を移動し始めた。最初は気づかずに光に沿って進んだ。そのせいで3人逝ったが、おかげで周辺の状況をよく観察できた。

この場所か? ここはデカい。単なる田舎の家じゃない。なんというか……まるで色んな場所の一片を集めてつなぎ合わせたような場所だ。アパートみたいな所もあるし、ショッピングモールみたいな所もある。信じられないだろうが、昔俺が通ってた高校のクローゼットまであった。タイルも何もかも同じだった。

他には……黒くて、影のような物質で出来た所もあった。その大部分は光に照らされていた。光が消えたら手を突き通すこともできる。おすすめはしないが。それでトーレスを失った。何かがあいつを捕まえて、引き込んだ。穴は、頭が通るほどの大きさもなかったが、それでもあいつは引き込まれて行った。

だから、光のある場所からは離れろ。暗闇では足元に気をつけろ。

もちろん、脱出する方法は無い。俺らもそれは理解した。どんな扉を見つけても、それはこの精神病棟の別の部屋につながるか、外につながるかで、俺らが生き残れないのは実に明らかだ。だからお前は餓死するのを待つか、奴らの一人に捕まるのを待つかだ。豊富な選択肢だな、ええ?

一つだけお前にできることがある。俺にはやり遂げられなかったが、多分お前にならできる。お前が生き残る役には立たないだろうが……大事なことだと思う。必ず誰かがやらなければならない。そうしないと、奴らが外に出て来るに違いない。

ここはたくさんの場所から盗んで出来た場所だ。だから俺は、他にも扉があるはずだと思った。俺たちは見つけた扉を片っ端から閉めていったが、再び扉が開いたらどうなる? 財団はそれを知らないよな? クソ、あいつらは扉を閉めることさえ知らない。誰かが家に入れば奴らは出て来なくなるってことを、あいつらが解明してくれるのを願うばかりだ。もちろん、入った後に扉を閉められるくらいにはそいつらが賢いって前提でな。

それで、俺は奴らを止める方法を見つけたと思う。巣だ。

巣は一度、数分見ただけだ。俺らは、デニングの心臓を取ったクソ野郎に付いて行った。そいつは心臓を、多分この家の中央にある部屋に持って行った。そこは真っ黒で、周囲の光を全て引きずり込んでいるように見えた。ランプも、懐中電灯も、ロウソクも、何もかもだ。見ている間、他の奴らも心臓を運んでいた。何より、中央には心臓が山のように積まれていた。心臓は全部、雑に放り込まれていて、切り開かれた状態だった。奴らがデニングの心臓を山に投げ込むと、心臓は鼓動し始め、脈打ち、そこら辺をのたうち回った。そして心臓は裂けて、奴らの一人がそれを引き抜いた。心臓は震えて、成長し始め、うまく動くようになった。気味悪かったのは、切り裂かれた心臓がばらばらになっても鼓動し続けたことだ。俺は、自分の胸に突き刺さるような痛みを確かに感じた。

そこには影があった。化け物のことじゃなくて、言葉通りの影のほうだ。影は人の形をしていた。だが、その影を映しているのは人間じゃない。影が伸びているのは、心臓からだった。新しい影が、化け物が孵化するのと同時に現れて、引き離れようともがいていた。

俺は逃げた。耐えられなかった。分かるか? こんなクソみたいな状況に対処する訓練は受けてねえ。後ろから仲間の声が聞こえた。仲間が俺を呼び止めようとしたのか、化け物に見つかったのかは分からないが、俺はあいつらと別れた。俺は丁度いい暗いクローゼットを見つけて、それ以来ここに隠れている。字を書くのにはペンライトを使っている。奴らが近づくのが聞こえたら、ライトは切る。それでうまく行ってる。今の所はな。

俺にはこれ以上ムリだ。銃には何発か残ってるが、もうマジで祈れない。巣を見ちまったからな。でもお前なら、もしお前がこれを見つけたなら、お前もエージェントにならなきゃいけない。きっとお前は俺よりも強い。できるなら、巣に行って破壊してくれ。心臓を残さず破壊しろ。そうすれば、奴らを殺せるかもしれない。俺に考えられる方法はそれだけだ。多分、やればお前は死ぬだろう。でもどうせ死ぬんだ。だから何の問題も無いだろ?

俺は、これからリビングに行ってこのレポートを置いてくる。お前がこれを見つけてくれるのを期待して。それで、俺は、俺の心臓は奴らに使わせたりしない。

幸運を。死にゆく者より敬礼を。