ロシア語文法の基礎をざっくり解説します。簡単にしようと思って書き始めましたが、あまり簡単にならなかった気がします。

名詞

ロシア語の名詞は、男性名詞、女性名詞、中性名詞のいずれかに分類されます。名詞の性は語尾でだいたい見分けることが可能です。

語尾
男性 -(子音), -й, -ь
女性 -а, -я, -ь
中性 -о, -е, -мя
  • 表を見て分かるとおり、語尾が -ь の場合は男性名詞か女性名詞か、個別に覚える必要があります。
  • папа [パーパ]「パパ」など、男性や男性の名前を指す名詞は、語尾にかかわらず男性名詞になります。

英語と同様に、ロシア語の名詞にも単数形と複数形があります。具体的な形は、次の格変化の項目で示します。

格変化
ロシア語の名詞には格変化があります。格の種類は以下の6つです。まずは、主格、生格、対格の意味を覚えておきましょう。

意味 説明
主格 「~は」「~が」 基本の形
生格(属格、所有格) 「~の」 所属、所有を表す
与格 「~に」 間接目的語を表す
対格 「~を」 直接目的語を表す
造格(具格) 「~によって」「~で」 道具や手段などを表す
前置格 前置詞と共に使われる

ロシア語の名詞は単数形と複数形でそれぞれ格変化するので、名詞だけで12個の形があることになります。例えば、кни́га [クニーガ]「本」は以下のように変化します。

単数 複数
主格 кни́га кни́ги
生格 кни́ги кни́г
与格 кни́ге кни́гам
対格 кни́гу кни́ги
造格 кни́гой, кни́гою кни́гами
前置格 кни́ге кни́гах

「AのB」
「AのB」と言いたい場合には、「B」の後ろに「A」の生格を置きます。
  • назва́ние кни́ги [ナズヴァーニイェ クニーギ]「本のタイトル」
  • назва́ния кни́г [ナズヴァーニヤ クニーク]「本のタイトル(複数形)」

「AはBだ」
「AはBだ」という文を作るには、名詞の主格を並べて間にダッシュを引きます。
  • Москва́ ― столи́ца Росси́и. [マスクヴァー スタリーツァ ラシーイ]「モスクワはロシアの首都だ」

参考:

代名詞

人称代名詞
人称代名詞とは「私」「あなた」などの代名詞のことです。人称代名詞も、普通の名詞と同様に格変化します。

一人称 二人称
単数 複数 単数 複数
「私」 「私達」 「君」 「君達」「あなた達」「あなた」
主格 я [ヤー] мы [ムィー] ты [ティー] вы [ヴィー]
生格 меня́ нас тебя́ вас
与格 мне нам тебе́ вам
対格 меня́ нас тебя́ вас
造格 мной на́ми тобо́й ва́ми
前置格 мне нас тебе́ вас
  • 二人称複数の вы には「あなた」という二人称単数の意味もあります。二人称単数は、親しい人や目下の人に対して使うカジュアルな言い方(親称)が ты で、丁寧な言い方(敬称)が вы です。なお、二人称複数は親称・敬称関係なく вы です。

三人称
単数 複数
男性 中性 女性
「彼」「それ」 「それ」 「彼女」「それ」 「彼・彼女ら」「それら」
主格 он [オーン] оно́ [アノー] она́ [アナー] они́ [アニー]
生格 его́ её их
与格 ему́ ей им
対格 его́ её их
造格 им ей и́ми
前置格 ём ей их
  • 「それ」の意味で使う場合は、指している物が男性名詞か中性名詞か女性名詞かで使い分けます。

「代名詞は名詞だ」
「代名詞は名詞だ」という文を作るときは、間のダッシュは不要です。
  • Я студе́нт. [ヤー ストゥジェーント]「私は男子大学生だ」
  • Она́ студе́нтка. [ヤー ストゥジェーントカ]「彼女は女子大学生だ」

参考:
「これ」を表す代名詞
ロシア語で「これ」は э́то [エータ] です。э́то は遠近にかかわらず、自分が指し示したいものを表すため、状況によっては「それ」「あれ」とも訳されます。人や複数のものを表すこともできます。
  • Э́то слова́рь. [エータ スラヴァーリ]「これは辞書だ」
  • Э́то не́бо. [エータ ニェーバ]「あれは空だ」
  • Э́то учи́тель. [エータ ウチーチリ]「こちらは先生だ」
  • Э́то кни́ги. [エータ クニーギ]「これらは本だ」

参考:
所有を表す代名詞
一人称と二人称では、所有を表すときに使う、専用の代名詞があります。この代名詞は、修飾する名詞の性、数、格に合わせて変化します。

мой [モーイ]「私の」、твой [トヴォーイ]「君の」、свой [スヴォーイ]「自分の」は、いずれも以下のように変化します。

単数 複数
男性 中性 女性
主格 мой моё моя́ мои́
生格 моего́ мое́й мои́х
与格 моему́ мое́й мои́м
対格 моего́
мой
моё мою́ мои́х
мои́
造格 мои́м мое́й, мое́ю мои́ми
前置格 моём мое́й мои́х

男性形と複数形における対格では、修飾する名詞が活動体(人や動物)のとき上段を、不活動体(物)のとき下段を使います。これは、以降登場する他の代名詞や形容詞でも同様です。(※他のウェブサイトなどでは上段と下段を逆に書いているところもあります)
  • моего́ отца́ [マイヴォー アツツァー]「私の父の」=「私の父を」(活動体は生格と対格が同形)
  • мой сто́л [モーイ ストール]「私の机が」=「私の机を」(不活動体は主格と対格が同形)

наш [ナーシュ]「私達の」、ваш [ヴァーシュ]「君達の」「あなた達の」「あなたの」は以下のように変化します。н を в に置き換えると ваш の変化表になります。

単数 複数
男性 中性 女性
主格 наш на́ше на́ша на́ши
生格 на́шего на́шей на́ших
与格 на́шему на́шей на́шим
対格 на́шего
наш
на́ше на́шу на́ших
на́ши
造格 на́шим на́шей, на́шею на́шими
前置格 на́шем на́шей на́ших

「私の本」と言う場合、女性名詞の кни́га「本」に合わて代名詞も女性形にします。
  • моя́ кни́га [マヤー クニーガ]「私の本」

「私の本の」と言う場合、生格の「本」に合わせて代名詞も生格にします。
  • назва́ние мое́й кни́ги [ナズヴァーニイェ マイェーイ クニーギ]「私の本のタイトル」

指示代名詞
ロシア語で「この」は э́тот、「その」「あの」は тот です。これらも修飾する名詞に合わせて以下のように変化します。

単数 複数
男性 中性 女性
主格 э́тот э́то э́та э́ти
生格 э́того э́той э́тих
与格 э́тому э́той э́тим
対格 э́того
э́тот
э́то э́ту э́тих
э́ти
造格 э́тим э́той, э́тою э́тими
前置格 э́том э́той э́тих

単数 複数
男性 中性 女性
主格 тот то та те
生格 того́ той тех
与格 тому́ той тем
対格 того́
тот
то ту тех
те
造格 тем той, то́ю те́ми
前置格 том той тех

形容詞

格変化
ロシア語の形容詞は、修飾する名詞の性、数、格に合わせて変化します。例えば、но́вый [ノーヴイ]「新しい」は以下のように変化します。

単数 複数
男性 中性 女性
主格 но́вый но́вое но́вая но́вые
生格 но́вого но́вой но́вых
与格 но́вому но́вой но́вым
対格 но́вого
но́вый
но́вое но́вую но́вых
но́вые
造格 но́вым но́вой, но́вою но́выми
前置格 но́вом но́вой но́вых

例:
  • но́вый стол [ノーヴイ ストール]「新しい机」
  • но́вая кни́га [ノーヴァヤ クニーガ]「新しい本」
  • кра́сный цвето́к [クラースヌイ ツヴィトーク]「赤い花」

形容詞は修飾語のほかに述語としても使えます。名詞と形容詞を並べるだけで文になります。
  • Э́тот цвето́к кра́сный. [エータト ツヴィトーク クラースヌイ]「この花は赤い」
  • Ва́ша су́мка кра́сная. [ヴァーシャ スームカ クラースナヤ]「あなたのカバンは赤い」

短語尾
ロシア語の形容詞には、上記の格変化の他に短語尾という形があります(これと対比して上記の形を長語尾と呼びます)。но́вый の場合、短語尾形は以下のようになります。

単数 複数
男性 中性 女性
нов но́во нова́ новы́, но́вы

短語尾は、述語としてのみ使われる場合があります。修飾語にはなれません。

述語で長語尾と短語尾のどちらが使われるかは様々な要素によって決まってくるので、経験の中からその使い分けを覚えていくしかありませんが、だいたい以下のように使い分けられる場合が多いです。
  • 長語尾:本質的な特性、絶対的な評価を表す。
  • 短語尾:一時的な状態、相対的な評価を表す。

例文:
  • Он здоро́вый. [オーン ズダローヴイ]「彼は(いつも)健康だ」「彼は健康な人だ」
  • Он здоро́в. [オーン ズダローフ]「彼は(今は)健康だ」

参考:

動詞

不定形
ロシア語では、動詞の基本的な形を不定形といいます。不定形は чита́ть [チターチ]「読む」や говори́ть [ガヴァリーチ]「話す」のように、基本的には語尾が -ть になっています。

現在形
英語の動詞の現在形は三人称単数のときだけ変化しますが、ロシア語の動詞の現在形は一人称、二人称、三人称のとき、単数、複数のとき、すべてで変化します。例えば、чита́ть は以下のように変化します。

単数 複数
一人称 чита́ю чита́ем
二人称 чита́ешь чита́ете
三人称 чита́ет чита́ют
  • 主語が вы のときは、意味が単数の「あなた」であっても二人称複数形の動詞を使います。

例文:
  • Я чита́ю. [ヤー チターユ]「私は読む」
  • Вы чита́ете. [ヴィー チターイチェ]「あなたは読む」

「Aを読む」と言う場合には、「A」を対格にします。
  • Он чита́ет кни́гу. [オーン チターイト クニーグ]「彼は本を読む」
  • Он чита́ет мою́ кни́гу. [オーン チターイト マユー クニーグ]「彼は私の本を読む」
  • Ты чита́ешь назва́ние кни́ги. [ティー チターイシ ナズヴァーニイェ クニーギ]「君は本のタイトルを読む」

過去形
動詞の現在形は上述したように人称で変化する一方、動詞の過去形は数と性で変化します。嬉しいことに過去形の変化はワンパターンで、どの動詞も語尾が男性で -л、中性で -ло、女性で -ла、複数で -ли になります。例えば、чита́ть は以下のように変化します。

単数 複数
男性 中性 女性
чита́л чита́ло чита́ла чита́ли

例文:
  • Я чита́л кни́гу. [ヤー チタール クニーグ]「私(男性)は本を読んだ」
  • Я чита́ла кни́гу. [ヤー チターラ クニーグ]「私(女性)は本を読んだ」
  • Она́ опозда́ла. [アナー アパズダーラ]「彼女は遅刻した」
  • Они́ опозда́ли. [アニー アパズダーリ]「彼・彼女らは遅刻した」

不完了体と完了体
ロシア語の多くの動詞には、不完了体と完了体のペアが存在します。不完了体と完了体には、およそ以下のような違いがあります。
  • 不完了体:動作の完了・不完了にかかわらず、動作を行うという事実に焦点を当てるときや動作の継続・反復・経験を表すときなどに使う。
  • 完了体:動作の完了や結果に焦点を当てるときなどに使う。

例えば、чита́ть は不完了体動詞です。それに対して、прочита́ть [プラチターチ]「読む」という完了体動詞があります。前者は「読んでいる」のニュアンスを含みますが、後者は「読み終える」のニュアンスを含みます。

例文:
  • Я чита́л кни́гу. [ヤー チタール クニーグ]「私は本を読んだ(読み終わったかどうかには触れていない)」「私は本を読んでいた」
  • Я прочита́л кни́гу. [ヤー プラチタール クニーグ]「私は本を読んだ(読み終わった)」

なお、完了体動詞には現在形がありません。過去形(もう終わらせた)か未来形(これから終わらせる)かのどちらかです。

参考:
未来形
ロシア語の動詞の未来形は、不完了体動詞と完了体動詞で作り方が違います。

不完了体動詞の未来形は、бы́ть [ブィーチ]「いる」という動詞の未来形に不定形をくっつけることで作ります。英語の will のようなものですね。бы́ть は人称と数で変化します。例えば、чита́ть の場合は以下のようになります。

単数 複数
一人称 бу́ду чита́ть бу́дем чита́ть
二人称 бу́дешь чита́ть бу́дете чита́ть
三人称 бу́дет чита́ть бу́дут чита́ть

完了体動詞は、動詞自身を未来形に変化させます。бы́ть と同様に、人称と数で形が変わります。例えば、прочита́ть は以下のように変化します。

単数 複数
一人称 прочита́ю прочита́ем
二人称 прочита́ешь прочита́ете
三人称 прочита́ет прочита́ют

参考


あとがき

ここまで書くのに2日かかりました。続きは当分書きません……