日本語の読点(とうてん)の使い方には明確なルールがありません。しかし、読点は文章の読みやすさを左右する重要な要素です。本稿では、読点の一般的な使い方をまとめ、どのように打てば文章が読みやすくなるかの「目安」を示したいと思います。
本稿では、はじめに「読点を打てる場所」について述べ、そのあとで「重要度の低い読点を省く」ということについて述べていきます。
ただし、「~して」で文がつながる簡単な文では読点を打たないことも多いでしょう。
ただし、文が簡単なときは読点を打たなくてもいいでしょう。
この打ち方は、よく読点のルールとして真っ先に挙げられますが、意外と重要度は低いです。
一方で、文が長いときも、適当に読点を省いたほうが読みやすくなります。例えば、次の1つめの文は普通に読めますが、2つめの文は妙に読みづらい感じがします。
長い文では、重要度の低い読点を省き、できるだけ読点を減らすと読みやすくなります。
はじめに
極端な話、日本語は読点がなくても読めます。ですので、打つかどうか悩むような読点であれば基本的に打たなくていいような気がします。個人的に、読点の使い方で大事なことは、重要度の高い読点だけを適度に打つことだと思っています。しかし「適度」というのが厄介で、例えば固い文章では読点が多く、緩い文章では読点が少ないなど、状況・人によって読点の数や打ち方が変わってくるので、そのあたりも含めて適度に調整する必要があるでしょう。本稿では、はじめに「読点を打てる場所」について述べ、そのあとで「重要度の低い読点を省く」ということについて述べていきます。
読点を打つ場所
読点を必ず打つ場所や打ってもいい場所について説明します。だいたい重要度の高い順に並べています。1. 誤解を防ぐために打つ
誤解や読み間違いを防ぐために読点を打ちます。この読点は必須と言えます。- よく晴れた夜、空を仰ぐと、
- ここで、はきものを脱ぎます。
- この会社には通常、融資をします。(※読点がないと、「通常融資」という名詞があるように見えてしまう。)
2. 語句の並列に打つ
名詞的・形容詞・副詞的語句の並列に読点を打ちます。特に名詞の並列では必ず打ちます。- 東京、名古屋、大阪、福岡などが日本では大都市だ。
- 静かな、明るい朝でした。
3. 語句を隔てて修飾する場合に打つ
語句を隔てて修飾する場合に打ちます。この読点がないと誤解が生ずる文もあります。- まだ火のよく通らない、生のでんぷん粒のあるくず湯を飲んで、
- 大きな、めがねをかけた男。(※読点がないと、めがねが大きいということになる。もっとも、この例文の場合は、可能なら「めがねをかけた大きな男」と言い換えたほうがいい。)
4. 文の中止に打つ
文の中止するところに読点を打ちます。動詞の「~し」「~して」などで文が切れる場所です。- 父も喜び、母も喜んだ。
- ぼくは町に出て、映画を見た。
- あいつは勉強もせず、毎日遊んでばかりいる。
- 太郎は休んだが、花子は休まなかった。
ただし、「~して」で文がつながる簡単な文では読点を打たないことも多いでしょう。
- ぼくは町に出て映画を見た。
5. 倒置した場合に打つ
文の成分を倒置した場合に読点を打ちます。- なんだ、このざまは。
6. 感動詞、呼びかけ、返事などの語のあとに打つ
感動詞、呼びかけ、返事などの語のあとに読点を打ちます。この読点は打たなければ不自然です。- おや、いらっしゃい。
- 坊や、おいで。
- はい、そうです。
7. 副詞・接続詞のあとに打つ
文のはじめに用いる副詞・接続詞のあとに読点を打ちます。- そのとき、彼が姿を現した。
- しかし、私は反対です。
8. 限定・条件などを表す文や語句のあとに打つ
限定・条件などを表す文や語句のあとに読点を打ちます。- 風が強いので、僕は窓をしめた。
ただし、文が簡単なときは読点を打たなくてもいいでしょう。
9. 主題のあとに打つ
主題のあとに読点を打ちます。主題とは、「~は」の部分のことです。主題または叙述の部分が長いとき、読点が打たれやすいです。- 私の家は、駅から遠い町はずれにある。
- 教壇の上の椅子に座っている人は、大学生です。
この打ち方は、よく読点のルールとして真っ先に挙げられますが、意外と重要度は低いです。
読点を省く
文が短くて簡単なときは、読点を省いたほうが読みやすい場合が多いですね。これについては、みなさんも比較的よく理解されていると思います。一方で、文が長いときも、適当に読点を省いたほうが読みやすくなります。例えば、次の1つめの文は普通に読めますが、2つめの文は妙に読みづらい感じがします。
- 私の家は、駅から遠い町はずれにある。
- 私の家は、駅から遠い町はずれにあるが、彼の家は、駅から徒歩5分の所にある。
長い文では、重要度の低い読点を省き、できるだけ読点を減らすと読みやすくなります。
- 私の家は駅から遠い町はずれにあるが、彼の家は駅から徒歩5分の所にある。
参考
- くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)
- 岩畑貴弘(2004)「読点の使用とその決定要素について―「構造」と「長さ」から―」
- 佐藤政光(2000)「日本語の読点について―規則の再検討―」
- ユニアルシー(2012)「日本語条件表現における読点の打ち方―文学作品を例として―」
- 富岡豊(1996)「日本語の句読法」
- 日本語の文章で読点のルールはどうなっていますか | ことばの疑問 | ことば研究館
- 句読点の打ち方/句読点の付け方──簡略版 | tobiのブログ
- 宮城信(2014)「読む読点、聞く読点―「読む」と「聞く」の文章表出における接点―」
- 個別相談 2-030 句読点がわからない (小1) | しろくまさんのまとめブログ
- 丸山岳彦、佐藤理史、夏目和子(2016)「現代日本語における節の分類体系について」
- 村田匡輝、大野誠寛、松原茂樹(2010)「日本語テキストにおける読点位置の検出」