アニメ「リトルバスターズ!」第21話・第22話で能美クドリャフカが使ったロシア語について少し紹介します。

ストレルカとベルカ

まずはストレルカとベルカの意味です。アニメでは理樹の質問に対してクドリャフカが、ストレルカ(Стрелка)は「小さな矢」、ベルカ(Белка)は「白」の意味だと答えています。名前に反して、ストレルカは大きな犬でベルカは黒い犬なのですが、これについてクドリャフカは「ロシアでは反対の意味をつけることがある」と説明しています。

どちらの名前にも -ка が付いていますが、これは指小辞といって、語の最後に付けることで「小さい」や「可愛らしい」を表します。ストレルカはストレラ(стрела=矢)に -ка が付いたもので「小さな矢」を意味し、ベルカはベールイ(белый=白)に -ка が付いたもので「白ちゃん」のような意味になります。ロシア語の指小辞といえば、「水(вода)」に -ка を足して「ウォッカ(водка)」になる、というのが有名です。ロシア人にとってウォッカは「お水ちゃん」程度の意味だったのでしょうか……とびっくりしますね。

ベルカは原作では「ヴェルカ」と書かれていたようですが、「Белка」をラテン文字に直すと「Belka」になるので「ベルカ」と言ったほうが正確です。また、ベルカには「白」の他に「リス」という意味もあります。

クドリャフカ

クドリャフカの本名は、クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ(Кудрявка Анатолиевна Стругацкая)です。クドリャフカの意味は「巻き毛ちゃん」で、おそらくクドリャーヴィ(кудрявый=巻いている)から来ています。

ロシア人のミドルネームは、父称といって父の名前から取られ、男性は「~ヴィチ(-вич)」、女性は「~ヴナ(-вна)」が付きます。クドリャフカの場合は父称がアナトリエヴナなので、クドリャフカの父はアナトリー(Анатолий)という名前なのだと分かります。

クドリャフカの母

クドリャフカの母は、チェルヌシカ・イワノヴナ・ストルガツカヤ(Чернушка Ивановна Стругацкия)です。チェルヌシカの名前は、黒を意味するチョールヌイ(чёрный)からでしょう。

チェルヌシカは、テヴアという国のコスモナーフト(космонавт=宇宙飛行士)です。テヴアには、ノーヴィ・バイコヌール基地という打ち上げ基地があります。ノーヴィ(новый)は「新しい」の意味で、クドリャフカの日本での名字「能美」はこの単語から来ているのだそうです。

父称がイワノヴナなので、チェルヌシカの父、すなわちクドリャフカの祖父はイワンという名前のようです。

ソ連の宇宙犬

クドリャフカ、チェルヌシカ、ストレルカ、ベルカは、ともに宇宙に行った犬の名前です。チェルヌシカ、ストレルカ、ベルカは地球に帰還した一方で、クドリャフカ(別名:ライカ(Лайка))は宇宙で死んでしまいます。アニメではこのことに触れられませんでしたが、死んでしまった犬の名前をクドリャフカに付けたのも、生きてほしいという願いを反対の意味にして付けたということなのでしょうか。

に・ぷーか、に・ぺーら

Ни пуха, ни пера(ニ プーハ ニ ペラー)は、ロシアの幸運を祈るときの言葉で、直訳すると「毛もなく、羽もなく」です。作中では「羽根をむしられて身一つで地獄へ行け、と。そうでなければ幸運は得られない」という意味だと言われています。

ただし一般的には、猟師が狩りの成功を願うとき、逆に「毛(獣)も羽(鳥)も獲れませんように」と祈ったことが由来だとされています。ロシアでは直接幸運を祈ると不幸になるというジンクスがあり、これを避けるために逆の言葉を言うそうです。英語の「Break a leg」に似ているかもしれませんね。

この言葉は、重要な試験や面接の前によく使われます。これを言われたら、伝統的に「К чёрту(クチョールトゥ=地獄に落ちろ)」と返事するそうです。

ふしー・はらしょー、しとー・はらしょー・こーんちっつぁー

Всё хорошо, что хорошо кончается(フショー ハラショー シトー ハラショー カンチャーイツァ)は、「終わりよければすべてよし」の意味。アニメでは語られませんでした。

ぷらしゃーいちー

Прощайте(プラシャーイチェ)は、最後にクドリャフカが言った「さようなら」です。英語の「Farewell」のように、もう会えないかもしれないときや、長い別れのときに使う言葉です。

参考


あとがき

原作未プレイですが、プレイ動画を見てちょっと勉強しました。

2018/9/29 記事更新